シーサー研究室・ネパール編2
― 宝珠を戴く獅子像 ― 祈りと守護の融合 ―
前回のネパール編①では、
寺院の門前に立つ獅子像が沖縄のシーサーと重なる“見守りの存在”であることをご紹介しました。
今回は、その獅子像の頭上に輝く“宝珠”に注目しながら、祈りと守護が交差する信仰のかたちを探ってみたいと思います。

ヒンズー教寺院の石の女神と守護獅子

カトマンズのバクタプルにあるブロンズ製の獅子
■ 宝珠を戴く獅子像 ― 祈りと守護の融合
ネパールの街を歩いていると、寺院の門前や王宮の入り口で、威厳に満ちた獅子像と出会うことがよくあります。
その姿は、ただ威圧的なだけではなく、どこか人間の祈りを静かに受け止めているような、柔らかな包容力を感じさせます。
特に私の目を引いたのは、頭上に戴かれた“宝珠”の存在でした。
これは単なる装飾ではありません。
まるで王冠のように、あるいは宇宙から授けられた叡智のように、堂々と輝いています。
この“宝珠”――仏教では「チンターマニ(Cintāmaṇi)」と呼ばれ、願いを叶える霊石として伝わっています。
如来や菩薩の手に握られていたり、法輪とともに描かれたりすることも多く、智慧・慈悲・真理を象徴する仏教の宝具とされています。
つまり、ネパールの獅子像がこの宝珠を戴いていることには、
単なる“守護獣”としての役割を超えた、精神的な導き手としての役割が込められているのです。
◆ 宝珠は「願い」だけでなく「心の光」
仏教におけるチンターマニは、物質的な欲望を叶えるものではなく、
むしろ“正しい願い”――苦しみを乗り越え、煩悩から解放されるための心の明かりを灯すものです。
この意味を獅子像に重ねると、
獅子は単に外敵や災厄を防ぐ存在ではなく、
訪れる人々が内面に向き合い、心を整えるための導き手としてそこに立っているのだとも言えます。
たとえば、沖縄のシーサーが「魔除け」として民間に広く親しまれているのに対し、
ネパールの獅子像は、より寺院的・宇宙的な守りの意味合いが強く、
一つひとつの姿が“信仰そのものの形”として存在しているように感じられます。

バクタプルのヒンズー教の女神像
下には獅子がいる
◆ ネパールに生きる“祈りの文化”としての獅子像
もう一つ注目したいのは、この宝珠を戴いた獅子像が、
ネパールという多宗教・多民族の国においても広く尊ばれているという点です。
ヒンドゥー教徒にとってはドゥルガー女神の乗り物として、
仏教徒にとっては仏陀の教えを護る守護神として、
それぞれの信仰の中で獅子は異なる意味を持ちながらも、
その姿に込められた“祈りを守る象徴”としての本質は共通しています。
そしてその象徴性を決定づけているのが、
まさにこの“宝珠”なのではないかと思うのです。

バクタプルのヒンドゥー寺院前の獅子像
◆ 仏教的守護者の進化形としての「宝珠獅子像」
インドでは、仏教が迫害された歴史の中で、多くの寺院や仏像が破壊されていきました。
しかしネパールでは、宝珠を戴いた獅子像のような存在が、
ヒンドゥーとも共鳴しながら、現代に至るまで寺院文化の中で守られ続けています。
宝珠は、ただの仏具ではなく、
信仰の根を絶やさず次代に手渡すためのシンボルなのかもしれません。
人々が祈るたびに、宝珠に込められた願いが獅子の背に受け止められ、
それが代々の寺の門前に立ち続け、信仰の火を灯し続けている。
そんなイメージを抱かずにはいられませんでした。
次回予告:
次回は、仏陀の生誕の地「ルンビニ」がネパールの信仰に与えている影響をもとに、
多民族国家における獅子像文化の意味を掘り下げてみたいと思います。
どうぞお楽しみに。
番外編
ネパールの獅子像をPhotoshopの写真集で探していると
時々面白くて興味深い獅子像を見つけます。
カイチの源流があるのでは?とおもったり
ネパールは、シルクロードを伝わって明らかに西洋の獅子も影響を受けてきた事がわかります。

Photoshopではカトマンズ渓谷とだけしか説明がなかったのですが
非常に興味深い像です。
中国のカイチを思わせるような角を持っていると思えば
ギリシャ神話に出てくるグリフォンのような翼もある。
ここはどこだろう?と思ったのですが
背景には、ちゃんとヒンズー教の神様がいる事と
カトマンズ渓谷と説明されていたのでネパールで間違いないと思うのですが
多種多様な像がある事に驚嘆します。

この写真の獅子像は、もう飛んでしまっている・・・。
その想像力と具現化する技術力!素晴らしいです。
それにこの像があるのは、アカシュバイラブ寺院といって3500年の歴史がある。
ネパールを代表する歴史的な場所なのですが、これまで
沢山の獅子像を見てきたのですが実際飛んでいる姿を表現している作品は初めてみました。
流石
ブッダが生まれた国。
ヒマラヤ山脈を抱く国。
ネパールを勉強すればするほど
その魅力に魅了されていきます。
あれ~~?中国編が大きいのかな?と思っていたのですが
ネパール編
まだまだ続きそうです!
それでは!
また来週も見てやってください(^^)
ぐぶりーさびら(失礼いたします)
前回のネパール編①では、
寺院の門前に立つ獅子像が沖縄のシーサーと重なる“見守りの存在”であることをご紹介しました。
今回は、その獅子像の頭上に輝く“宝珠”に注目しながら、祈りと守護が交差する信仰のかたちを探ってみたいと思います。

ヒンズー教寺院の石の女神と守護獅子

カトマンズのバクタプルにあるブロンズ製の獅子
■ 宝珠を戴く獅子像 ― 祈りと守護の融合
ネパールの街を歩いていると、寺院の門前や王宮の入り口で、威厳に満ちた獅子像と出会うことがよくあります。
その姿は、ただ威圧的なだけではなく、どこか人間の祈りを静かに受け止めているような、柔らかな包容力を感じさせます。
特に私の目を引いたのは、頭上に戴かれた“宝珠”の存在でした。
これは単なる装飾ではありません。
まるで王冠のように、あるいは宇宙から授けられた叡智のように、堂々と輝いています。
この“宝珠”――仏教では「チンターマニ(Cintāmaṇi)」と呼ばれ、願いを叶える霊石として伝わっています。
如来や菩薩の手に握られていたり、法輪とともに描かれたりすることも多く、智慧・慈悲・真理を象徴する仏教の宝具とされています。
つまり、ネパールの獅子像がこの宝珠を戴いていることには、
単なる“守護獣”としての役割を超えた、精神的な導き手としての役割が込められているのです。
◆ 宝珠は「願い」だけでなく「心の光」
仏教におけるチンターマニは、物質的な欲望を叶えるものではなく、
むしろ“正しい願い”――苦しみを乗り越え、煩悩から解放されるための心の明かりを灯すものです。
この意味を獅子像に重ねると、
獅子は単に外敵や災厄を防ぐ存在ではなく、
訪れる人々が内面に向き合い、心を整えるための導き手としてそこに立っているのだとも言えます。
たとえば、沖縄のシーサーが「魔除け」として民間に広く親しまれているのに対し、
ネパールの獅子像は、より寺院的・宇宙的な守りの意味合いが強く、
一つひとつの姿が“信仰そのものの形”として存在しているように感じられます。

バクタプルのヒンズー教の女神像
下には獅子がいる
◆ ネパールに生きる“祈りの文化”としての獅子像
もう一つ注目したいのは、この宝珠を戴いた獅子像が、
ネパールという多宗教・多民族の国においても広く尊ばれているという点です。
ヒンドゥー教徒にとってはドゥルガー女神の乗り物として、
仏教徒にとっては仏陀の教えを護る守護神として、
それぞれの信仰の中で獅子は異なる意味を持ちながらも、
その姿に込められた“祈りを守る象徴”としての本質は共通しています。
そしてその象徴性を決定づけているのが、
まさにこの“宝珠”なのではないかと思うのです。

バクタプルのヒンドゥー寺院前の獅子像
◆ 仏教的守護者の進化形としての「宝珠獅子像」
インドでは、仏教が迫害された歴史の中で、多くの寺院や仏像が破壊されていきました。
しかしネパールでは、宝珠を戴いた獅子像のような存在が、
ヒンドゥーとも共鳴しながら、現代に至るまで寺院文化の中で守られ続けています。
宝珠は、ただの仏具ではなく、
信仰の根を絶やさず次代に手渡すためのシンボルなのかもしれません。
人々が祈るたびに、宝珠に込められた願いが獅子の背に受け止められ、
それが代々の寺の門前に立ち続け、信仰の火を灯し続けている。
そんなイメージを抱かずにはいられませんでした。
次回予告:
次回は、仏陀の生誕の地「ルンビニ」がネパールの信仰に与えている影響をもとに、
多民族国家における獅子像文化の意味を掘り下げてみたいと思います。
どうぞお楽しみに。
番外編
ネパールの獅子像をPhotoshopの写真集で探していると
時々面白くて興味深い獅子像を見つけます。
カイチの源流があるのでは?とおもったり
ネパールは、シルクロードを伝わって明らかに西洋の獅子も影響を受けてきた事がわかります。

Photoshopではカトマンズ渓谷とだけしか説明がなかったのですが
非常に興味深い像です。
中国のカイチを思わせるような角を持っていると思えば
ギリシャ神話に出てくるグリフォンのような翼もある。
ここはどこだろう?と思ったのですが
背景には、ちゃんとヒンズー教の神様がいる事と
カトマンズ渓谷と説明されていたのでネパールで間違いないと思うのですが
多種多様な像がある事に驚嘆します。

この写真の獅子像は、もう飛んでしまっている・・・。
その想像力と具現化する技術力!素晴らしいです。
それにこの像があるのは、アカシュバイラブ寺院といって3500年の歴史がある。
ネパールを代表する歴史的な場所なのですが、これまで
沢山の獅子像を見てきたのですが実際飛んでいる姿を表現している作品は初めてみました。
流石
ブッダが生まれた国。
ヒマラヤ山脈を抱く国。
ネパールを勉強すればするほど
その魅力に魅了されていきます。
あれ~~?中国編が大きいのかな?と思っていたのですが
ネパール編
まだまだ続きそうです!
それでは!
また来週も見てやってください(^^)
ぐぶりーさびら(失礼いたします)